空をはさむ蟹

くうをはさむかに 〜子規門下雑記帳〜

2020-01-01から1年間の記事一覧

『大震災日記』⑤九月六日 ~丸の内、有楽町、そして銀座~

この日から、被災者のために無料の電報の受付が始まるという情報を得て、碧梧桐は昨晩のうちに作っておいた約10通の電報文を携えて、東京駅前の中央電信局を目指して出かけました。 出てくる建物や地名の主なものを、地図に書きこんだり、地図上の記載をわか…

『大震災日記』④九月四日、五日 知人たちを見舞う ~火に追われた飄亭、度胸のある女史、元気な鳴雪翁~

震災から四日目。碧梧桐は東京の知人の震災見舞いを始めることにしました。まずは西へと歩き、四谷の愛住町(今も同じ地名が残る)のI氏宅へ向かいました。本文中の二人の会話から、このI氏というのは、同じ松山人の子規の友人かつ俳友であり碧梧桐とも付き…

『大震災日記』③九月三日 ~朝鮮人へのデマと自警団~

三日の朝、碧梧桐は甥を連れて再び備蓄食料の買い出しに出かけました。するといつの間にか、この加賀町一丁目のはずれに“自警団”の屯所なるものが出来ており、通行証を持たなければ出入りを許さないシステムになっていました。碧梧桐がそこで自警団自作の通…

『大震災日記』②九月二日 ~九段上から帝都の全滅を見る~

大震災から一夜明けた二日の朝、碧梧桐が姉家族の長屋で目を覚ますと、火事見物と避難を兼ねて昨夜向かいの第四中学へ行っていた姉や妻たちも、いつのまにか長屋に戻ってきていました。そうして彼女たちから、碧梧桐はこんなうわさ話を聞かされます。 「ゆふ…

『大震災日記』①九月一日

関東大震災の日を目前に控え、今日から複数回に分けて、碧梧桐が震災当時を綴った文章を紹介したいと思います。雑誌への掲載時、『大震災日記』というタイトルの前の行には『創作』と書かれています。これは、「個人の実際の日記からの転載ではなく、(今で…